Instagram運用は、ともすれば、「若手に任せて、なんとなく」で進んでしまうケースも多々あります。
しかし、売上、集客、認知度の向上、ブランドイメージの確立、ファンの獲得など、ビジネスの成功につながる成果を求める場合、こうした「なんとなく」の運用では、結果は期待できません。
本当に成果につながるInstagram運用は、新規事業の立ち上げと同程度の準備が必要になります。
そこで今回は、Instagram運用を新規事業プロジェクトと見立て、事業計画に重要な3つの経営リソース、「人材・予算・時間」の観点から、何が必要となるのか、そしてなぜ必要になるのかを、解説していきます
前回コラム
【第1回】Instagram運用に成功すると?期待できるメリットや利益と、成果を得るためのポイント
Instagram運用に必要な人材とは
まず重要になるのは、人材です。どんなプロジェクトも、それに適した人材がいなければ遂行できません。これは、企業のInstagram運用でも同様です。
Instagramの企業アカウント運用は、「誰にでもできること」ではありません。
Instagramは、無料でアカウントを開設し誰でも気軽に始めることができます。そのため、「Instagramなんて、今の若者に任せておけばうまくいくものだろう」と考えてしまうことも多いかもしれません。
しかし、企業アカウントの運用となると、個人のプライベートなアカウントとは大きく異なります。適切なスキルや知見を持った人材をアサインしなければ、事業に貢献するような成果を求めることは、難しくなってしまうからです。
それでは、どのような人材が、なぜ必要になるのでしょうか?具体的に確認していきましょう。
※SNS広告の基礎については、こちらのショートウェビナ―動画をご覧ください。
必要な人材1:マーケティング視点を持った人材=マーケター
まず必要になるのは、マーケティング視点を持った人材、いわゆる「マーケター」です。
企業にとってInstagramは、顧客と1対1の、直接的なコミュニケーションを取れるプラットフォームになります。従って、Instagram上での企業活動は、顧客関係管理(CRM)の側面を強く持つと考えても良いでしょう。
一人一人の顧客との信頼関係を高め、適切な関係を維持する「顧客関係管理」は、マーケティングの重要事項の一つです。
こうした視点を持って取り組むことが、成果につながる重要なファクターとなります。コミュニケーションを取りながら、お客様の声を集め、顧客のニーズを把握し、製品やプロモーションに反映していける視点が大切です。
■マーケティングファネルのあらゆる階層の人々が閲覧する
また、Instagramのビジネスアカウントは、「情報発信の場」でもあります。フォロー・フォロワーの関係“ではない”ユーザーも、アカウントさえ持っていれば、投稿を閲覧できることに気を配りましょう。
・自社の製品やブランドを認知してはいないが、関連する分野に興味を持っている人々。
・自社の製品やブランドを認知しており、興味はあるが購入には至っていない人々。
・そして、製品やブランドを認知しており、かつ購入意欲のある人々。
・すでに購入し、利用者となっている人々。
このように、マーケティングファネルのあらゆる階層の人々が、自社のInstagramアカウントを閲覧する可能性があります。
このことを考えれば、「どのような層に向けて、どのような情報を発信するか」を戦略的に立案し、計画的に運用するために、マーケティングの視点が欠かせないと言えるでしょう。
必要な人材2:フォトグラフィック、画像編集、ライティングなど、クリエイティブの専門家
Instagram運用は、投稿するコンテンツも非常に重要です。
いかに「フォローする価値のあるコンテンツ」を提供し、他のアカウントとの差別化を図れるかが、フォロワー数増加の大きな要因になるためです。
ターゲットユーザーの目線で考えて、「このアカウントをフォローしたい」と思えるような、価値の高いコンテンツを提供していくことが、アカウントを育てるためには欠かせません。
Instagram運用であれば、具体的には、次のような専門性を持った人材が例に挙げられます。
■フォトグラファーやイラストレーター、画像編集など、写真・画像の専門家
Instagramは写真や画像をメインコンテンツとしたSNSです。そのため、ユーザーが閲覧して、ファーストインプレッションで好感を持てるような、高品質な画像は欠かせません。
また、近年はスマホのカメラ機能も進化しており、アプリ等で高度な編集も容易に行えるようになっています。いわゆる「インスタ映え」と言われますが、Instagramで人気の出やすい写真の撮影方法や編集方法も、ユーザー同士で知見が共有化されています。
こうした背景もあって、一般ユーザーの投稿する写真や画像も高品質化が進んでいます。なんの工夫もなく撮影した写真をそのまま掲載するだけでは、競合との差別化どころか、低品質なアカウントだと見なされてしまう可能性もあります。
より高い水準で“プロ並みの写真”が求められると言って良いでしょう。
■ライティングなど、文章やキャッチコピーの専門家
SNS投稿において、画像と並んで主要なコンテンツになるのが文章です。
どれだけ魅力的な写真が並んでいても、そこに「言葉」が無ければ、ブランドの世界観やメッセージを伝えることはできません。逆に、同じ写真でも、より魅力的な投稿文が付くことで、閲覧数や反応率が大幅に伸びることもあります。
またSNSでは、ユーザーとのコミュニケーションも文章で行われます。他のユーザーの投稿にコメントを付けたり、自分の投稿についたコメントに返信をしたり、といったコミュニケーションは、短い文章で行われることが通常です。
短い文章で、誤解なく伝わり、さらに好印象になるような文章を作ることは、そう簡単なものではありません。キャッチコピーやライティングの専門的な技能が必要になります。
■炎上対策に、SNSユーザーの気持ちや価値観を理解できる人材も
Instagram運用では、いわゆる「炎上」のリスクもあります。
SNSにおける「炎上」とは、アカウントや投稿に対して批判の声が広がり、多数のユーザーから非難されてしまう現象のことです。
「多くの人を怒らせるような投稿をしなければ良い」「自社のSNS担当者はシッカリしているから大丈夫だ」といった認識では、炎上対策になりません。
・長年の運用経験のあるアカウントでも、炎上のリスクはある
・SNS炎上により、製品の発売中止といった重大な事態に発展する恐れがある
・「女児向けグッズのキャラクターのセリフ」といったニッチな要素でも、顧客コミュニティを超えて批判が広がる
…等のSNSならではの特徴がわかります。SNSにおける炎上は、従来の「クレーム」とは大きく異なる性質を持っていると言えるでしょう。こうした炎上のリスクを抑えるために、「SNSユーザーの気持ち」がわかる人材も欠かせません。
プラスアルファで、「新しいこと」ができるアイデアや独創性を持った人材も
アカウントの成長を考える上で、「新しいこと」が出来るかどうかは、成功の鍵を握る要素の一つです。
Instagramは、「新しいこと」「他のアカウントがやっていないこと」「共感を呼ぶこと」に注目が集まるポテンシャルを持っています。いわゆる差別化戦略の有効性が高いと言って良いでしょう。
他の企業アカウントとは異なるアプローチを取り入れることは、Instagram運用に大きなプラスをもたらす可能性があります。
「新しいこと」ができるアイデアや独創性を持った人材がアサインできると、非常に心強いでしょう。
Instagram運用に必要な予算
続いて、予算について見ていきましょう。
Instagramは企業アカウントも無料で運用できます。しかし、
「誰でも無料で使えるから予算はまったく付けなくて良い」
「SNS担当者の人件費のみで運用できる」
と考えてしまうのは、企業アカウントを育てる観点からは、適切とは言えません。
ブランドの認知向上、売上アップや集客力の増加など、事業として成果を求めるのであれば、相応の予算も必要になります。
たとえば、Instagramマーケティングに精通した人材や、コンテンツ制作のプロ等の外注費も必要になるでしょう。Instagram分析の専門ツールを導入する場合、その導入費用なども掛かります。
また、Instagramでは、有料広告を出稿することも可能です。アカウントの認知を広げるために、こうした広告出稿が効果的になるケースもあります。広告の出稿量も予算に入ってくるでしょう。
他にも、たとえば新製品のプロモーションを行う際など、「特定のハッシュタグを付けて投稿すると抽選〇名にプレゼント」といったキャンペーンを展開する場合もあります。こうした施策にも予算が必要です。
■予算を掛けないと、結果として人件費だけが無駄になってしまう
Instagram運用は、しっかりと予算を掛けることが大切です。具体的な予算規模はプロジェクトによって異なりますが、もっとも良くないパターンは、「目的もなくただ何となくで運用してしまう」ことです。
なんとなくInstagramが流行っているからアカウントを開設し、若手社員を「若いからできるだろう」と担当者にアサインして、あとは任せておく…といったケースは比較的よく見受けられますが、これでは何の成果にもつながりません。
それどころか、目的もないまま時間だけ(=担当者の人件費だけ)掛かり、無駄なリソースを消耗してしまいます。
それを防ぐためにも、最初からしっかりと計画を立て、予算を付け、投資していくことが重要です。
Instagram運用に必要な時間
Instagram運用には、それなりの「時間」も必要です。
「アカウントを開設して写真を投稿していれば、すぐにフォロワーが増えて集客増加や売上アップが実現できる」
「だいたい2~3ヵ月ぐらいで売上が発生してくるはず」
と考えてしまうケースも多いのですが、実際はもっと時間が掛かります。
一般論ではありますが、たとえばアカウントの「認知獲得」を目的とした場合、それなりの認知が広まるまで半年は下積み期間となります。
■Instagramのシステムに評価されるまで、時間が掛かる
Instagramのシステムは、機械学習でアカウントの内容や利用状況などを評価しています。この評価が一定程度まで高くならなければ、ユーザーが検索しても検索結果になかなか表示されなかったりと、認知が広まりにくくなります。「アカウントがアクティブで、ユーザーがついている」と評価されるまでに、それなりの時間が掛かります。
■半年~1年は下積み期間と捉え、中長期的な運用を
Instagram運用は中長期的なプロジェクトです。半年から1年は下積み期間と捉え、高品質なコンテンツを継続的に投稿したり、ユーザーと交流を図っていくことが重要です。
なかなか成果につながらず、焦りが生じてしまうこともあるかと思いますが、「半年から1年程度は掛かるもの」と認識して、焦らずにじっくり取り組みましょう。
まとめ:Instagram運用は、十分な時間と予算、適切な人材が成功の秘訣
Instagram運用は、つい気軽に捉えて「なんとなく」で始めてしまったり、始めて数か月で成果を求めてしまいがちです。
しかし実際には、Instagram運用を始めることは、新しく事業を一つ立ち上げることと同じです。適切な人材をアサインし、必要な時間と予算を確保して取り組まなければ、事業に資する成果には結びつきません。
一方で、こうしたリソースをしっかりと確保して、的確に運用に取り組んでいけば、やがては広告費換算で数百万円~数千万円もの価値を生み出す資産になります。
必要なリソースを整えて、本格的に取り組んでいきましょう。