消費者ニーズの多様化に伴い、商品のライフサイクルの短期化が著しく進行しています。そのため、企業がヒット商品を生み出すことは、ますます困難になっていると言えるでしょう。良いものを作れば売れる時代は終わり、企業は消費者が求める商品を作る必要があります。
消費者が何を求めているのかを明らかにするためは、コンセプト調査が不可欠です。
今回はヒット商品の事例をあげながら、商品コンセプトを考えるうえでのポイント、新商品開発に欠かせないコンセプト調査をご紹介します。
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消費者のニーズをとらえたコンセプトで開発したヒット商品「本麒麟」の事例
昨今のアルコール市場はさながらマーケティング戦国時代のようです。真に新しいアルコール飲料の開発が難しい一方で、他商品との差別化を行い、消費者を引き付ける新商品が次々と発売されています。若者のアルコール離れ、といわれるような時代背景の中でも、近年で目覚ましいヒット商品となったのが、第3のビール「本麒麟」ではないでしょうか。
この本麒麟が生まれた背景には、第3のビールに生活者が求める価値を的確にとらえた商品コンセプトと、それを確かに再現する商品クオリティの両立があったようです。
消費者が求めている価値とは何か、その理解を深めるためにインタビュー調査を繰り返し実施し、そこで得たアイデアの種・仮説があっているのか、需要があるのかを定量調査で確認していくというマーケティングリサーチの王道ともいえる方法をとっています。

結果、生活者が求めているのは「ビールらしさ」であり、それをできる限り再現するというコンセプト。
商品コンセプト立案段階から、試作品の味、パッケージ、コミュニケーションに至るまで徹底的に調査を行ったというマーケティング施策の裏にあるのは、徹底的に消費者の本音となる思いを把握しようという生活者起点のマーケティングでしょう。
至ったコンセプト自体に真新しさは感じないかもしれませんが、消費者のニーズを捉え、本気でそのニーズに応えようとした思いがヒット商品につながったのではないでしょうか。
【参考】
「キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(商品開発編)」(閲覧日:2020/09/08)
「キリン本麒麟を生んだマーケター「売れる商品に社内の反対はつきもの」」(閲覧日:2020/09/08)
行動観察による徹底的な消費者把握で開発した「dyson」の事例

今やその商品コンセプトとともに、誰もが知る企業となった「Dyson ダイソン」。ダイソンが、代表商品であるサイクロン掃除機を開発するきっかけとなったのは、年月が経つにつれて吸引力が弱まってしまう掃除機に対する生活者の不満を知ったからだったといいます。その不満を解決するため、5年という年月を研究開発に費やした結果、世界初のサイクロン掃除機「dyson」を開発します。
その5年の間に開発された試作品の数は5127。徹底的に製品テストを繰り返しました。
ダイソンの圧倒的に強いキャッチコピーは、吸引力が変わらないという、消費者のニーズに応え、商品のベネフィットをはっきりと伝えています。圧倒的なブランディングにつながっている要因の一つでしょう。
【参考】
【保存版】ダイソンを徹底分析 元祖サイクロン掃除機の誕生秘話から今にいたるまで(閲覧日:2020/09/08)
ダイソコーポレートサイト(閲覧日:2020/09/08)
ヒット商品開発の事例から学ぶ、商品開発のポイントとは?
この本麒麟とダイソンの2つの事例に共通して言えることは、以下の3点ではないでしょうか。
●消費者の気持ちにこたえるための商品であること
●消費者の思いを捉えたコンセプトを商品に持たせたこと
●その商品コンセプトを体現する質の高い製品を開発したこと
本麒麟は第3のビールに生活者が本当に求める価値を徹底的なインタビュー調査により浮彫にし、dysonは実際の生活者の不満を解消したいとう思いで開発をはじめてします。どちらも商品開発の発端となるのは、消費の思いです。そしてその消費者の思いに応える商品コンセプトのもと、商品の魅力・ベネフィットを伝えるコミュニケーション方法を研ぎ澄ましています。
また、商品コンセプトを具現化する確かな開発力があるからこそ、消費者に商品コンセプト通りのベネフィットを感じさせることができています。
日本の多くの企業は確かな開発力を有しており、商品の質自体は問題ないことがほとんどではないでしょうか。
よって、商品開発の肝となるのは、「いかに生活者の気持ちを理解するか」、「生活者の思いに応え、生活者にとって魅力的な商品コンセプトを開発することができるか」ということす。
消費者心理・顧客心理の理解の重要性とその方法とは?
生活者の気持ちを理解することが重要であることはこれまでの事例にあったとおりであり、調査を通じて理解を促進することが通常です。特に開発に効果的なものは「なぜ、そのような気持ちになるのか?」の生活者本人も意識していないところを生活文脈から理解し、本質を理解することが求められます。人が合理的な行動をとらないことは行動経済学でも述べられているとおりであり、言い換えると直線的・論理的な開発では生活者のニーズにマッチすることができなくなってきています。生活者の感情の機微まで理解に努め共感することができなければ、新たなニーズを引き出すことは難しい時代になってきているからです。
消費者の気持ちを理解し、ニーズを把握する方法については、主に2つあります。
一つは本麒麟の事例でも出てきた、インタビュー調査です。インタビュー調査には、一度に複数名にインタビューを行う「グループインタビュー」と、インタビュー対象者とインタビュアー(モデレーター)との1対1の「デプスインタビュー」があります。
インタビュー調査について詳しくはコチラ
もう一つは「行動観察調査」と呼ばれるものです。通常のインタビュー調査とは異なり、対象者のご自宅で例えば掃除機などをかけてもらう様子も観察対象とします。今使っている掃除機の不満など、新しいアイデアの種になるような情報は、行動観察調査を実施することで発見できる可能性があります。
行動観察調査について詳しくはコチラ
デプスインタビューは1対1で発言を深掘り、当事者自身になぜ、そう思うのか?を考えてもらうことにより、新たな意識を顕在化させていく方法となります。ここに新たなニーズが隠れているわけです。
また、より理解を促進するのであれば訪問観察が有効になります。生活環境を観察することは多くの言語情報にも勝る情報であり、その生活者の生活風景を脳裏に描くことが出来ます。
直線的な開発ではヒットが生まれにくい現在の商品開発において、このような非直線的な開発に役立つ情報を調査で得ることが重要となってきています。

商品コンセプト開発の方法とは?
世の中にある商品には基本的にすべてコンセプトがあります。なぜなら、このコンセプトは日本語に訳すと「概念」ともいうように、商品を開発するための設計などの土台となっているものだからです。
では、コンセプトはどのようにして開発していくのでしょうか?それは生活者の不満や社会的な課題などが根本にあります。その不満や課題を解決するアイデアを、より具現化・詳細化していったものがコンセプトとして成立していきます。
また、現代は生活者の不満を見つけることが困難な時代とも言えるため、生活者が気づいていない不満(インサイト)を掘り出し創造することも、コンセプト開発において重要な役割となっています。
コンセプト開発上での調査は定量調査、定性調査それぞれありますが、昨今は定性調査からコンセプトにつなげる企業が増えています。それは、定性調査のほうが気づかず通り過ぎてしまいそうな”小さいけど重要な不満”をすくいあげることに向いているからです。
また、調査から得た情報を素材としてワークショップでアイデアだしを行っていきます。アイデアは対話を通じて具体化していき、その過程でユニークさを付加させて、最終的に独自のコンセプトへと昇華していきます。このコンセプトにおいて重要なことはターゲットに提供する価値は何か?をしっかりと明文化できていることが重要となります。
コンセプトシートの作製
商品コンセプトを開発する際には、商品のコンセプトをわかりやすく伝える資料、コンセプトシートを用意します。コンセプトシートを構成する項目は、大きく3つです。
① ニーズを喚起するメッセージ
商品を手に取ってもらうために重要なのは、「共感」を生むことです。生活者のニーズを呼び起こすような、「○○なことはありませんか?」というような、課題感に訴求するメッセージです。
② 生活者者へのベネフィット
商品が誰に、どのようなベネフィット(どうなれるのか)を提供するのか、具体的に示す必要があります。
商品を使うことで、ニーズを満たすことができることをわかりやすく示すことが必要です。
③説得力のある根拠
ニーズを満たす商品であること、求めるベネフィットを提供する商品であることの根拠を示し、
生活者に信頼してもらうことが重要です。商品の機能や成分などの特徴を提示することで、説得力を持たせます。
ここまで紹介してきた内容は、コンセプトシートの項目とも重なります。事前に商品コンセプトの重要な情報を整理しておけば、企画も進めやすくなるでしょう。
【コンセプトシートのイメージ】

コンセプト調査とは?
商品コンセプトの開発時に重要になってくるのが、コンセプト調査です。開発フェーズを進めるうえで、コンセプトのGO、NoGoを判断するためのコンセプト調査は、商品化を進める上で欠かせない検証プロセスといえるでしょう。ここではコンセプト調査の概要や、その注意点を解説します。
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コンセプト段階での需要に関する調査
コンセプト調査とは、商品化を進める上で必須ともいえる検証プロセスです。想定しているターゲットに、コンセプト段階でほしいと思ってもらえるのか、を検証する調査のことを指します。目的に応じてインタビューで検証することも増えていますが、最終的には定量的に把握しておくことをおすすめします。
主に確認する内容は、コンセプトによる購入意向や価格感、コンセプトの魅力点(どの部分が魅力となっているのか)などがあげられます。また、コンセプトがどの程度の受容性があるのか、すでに市場で売れている商品をコンセプトに戻し、同じ質問をすることで市場にある商品との比較なども行います。
これによって、コンセプト段階での完成度を実績のある既存商品と比べることで、わかりやすさが格段にあがります。また、独自の基準(ノルム値)をもっている企業も少なくありません。
このように商品化を進めていく上で、コンセプト段階での検証は非常に重要な開発プロセスの一つといえるでしょう。
コンセプト調査の注意点
コンセプト調査を行うときには、機密保持の観点が必要です。上市していない商品のコンセプトなので、企業としてはTOPシークレット、外部にできるだけ出したくない企業秘密です。クローズの場で調査できること、調査対象者の質が担保されていることが前提です。
コンセプト調査の調査方法にも留意してください。企業が考えるコンセプトをよりわかりやすく消費者に伝えるために、試作品のサンプルを用意したり、画像や動画を利用したりすることも効果的です。
コンセプト調査の方法を工夫することにより、自社の考えた商品コンセプトにターゲット層がどの程度魅力を感じるか、商品化時の購入の可能性、競合商品と比較した感想など、さまざまな有益な情報を引き出すことができます。
企業内で商品コンセプトが固まっていないときは、プロトタイプのコンセプトを基に市場の反応を探り、コンセプトをブラッシュアップする方法も有効です。消費者から集めた生の声を分析してどのような要望があるか探り、コンセプトを設定します。
商品コンセプトの評価方法
コンセプト調査の結果は、以下のように分析します。
第一印象:コンセプトを始めてみた時の印象。
使用意向:自身が使うかどうか。
魅力×新規性:魅力と新しさを感じるところを明らかにします。
共感性:コンセプトに共感してくれる層が、ターゲットとなり得ます。
購入意向:実際に購入するかどうか。
理解度:理解されたうえでの評価か、確認します。
まとめ
商品コンセプトは、商品開発の核となる要素です。また優れた商品コンセプトを生み出すだけでなく、それを評価するシステムも重要になります。新しい商品やサービスを開発・企画する際は、商品コンセプトを想定してみるとよいでしょう。
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