D2Cブランドにとって、SNS運用は必須といっても過言ではありません。
この記事では、
・D2Cブランドにとって、SNSはなぜ重要なのか?
・D2CのSNS活用に、どのような成功事例があるのか?
・成功事例からどんなノウハウが学べるか?
といった点を、具体的に解説していきます。
D2Cとは?Eコマースとは違うブランディング戦略
まずは改めて、D2Cとは何なのか解説していきましょう。
D2Cとは「Direct to Consumer」を省略したビジネス用語です。製造者が消費者にダイレクトに商品を販売するビジネス形態になります。ただし、従来のEコマースやBtoCビジネスとは、大きく異なる戦略です。
たとえば従来のEコマースでは、販売サイトはチラシのようなイメージのものも多数見受けられます。ですが、D2Cブランドの販売サイトでは、まったく違ったデザインになります。
チラシのようなセールスではなく、ブランドのメッセージやストーリーといった価値観に重きを置き、それらを一貫して発信することを重視するのが、D2Cの特徴です。
こうしたD2Cの特徴について、詳しくは次の記事にて解説していきます。
関連コラム:「D2Cとは?D2Cのメリット・特徴や従来通販との違いを紹介!」
なぜD2CにはSNS運用が重要なのか
では次に、なぜD2CにとってSNS運用が重要なのか、その理由を見ていきましょう。
●SNSは双方向コミュニケーションであり、マーケットイン戦略とも相性が良い
従来のプロダクトアウト戦略と異なり、D2Cはマーケットインのスタンスを採用するのが基本です。マーケットインとは、すなわち顧客の需要に基盤を置いて、商品やサービスを展開することです。
綿密なマーケティング調査に基づき、顧客がどんな商品を必要としており、その商品によってどんな体験を得たいと考えているのかを明らかにします。そして、それを実現できるソリューションとして、自社の製品やサービスを展開していきます。これがマーケットインの基本的な考え方です。
D2C戦略において、マーケットインは非常に重要なファクターになります。そのため、顧客と双方向にコミュニケートでき、顧客の声をキャッチアップしやすいSNSは、D2Cの実施において重要なフィールドになります。
●ソーシャルリスニングにより、データドリブンなビジネスにも強い
的確なマーケットイン戦略の実現には、データドリブンなビジネスモデルが欠かせません。
SNSはその性質上、インプレッション率、シェア率、反応率、顧客のペルソナなど、さまざまなデータを収集し、分析に用いることができます。
こうした指標は従来のWEBメディアでも一定程度は分析できますが、SNSの場合、一人一人の顧客の行動や反応をきめ細かくキャッチできるため、より一人一人に合わせたサービス展開が可能になります。
たとえば、生活者(=見込み客)がSNSを通して発信している情報を分析することで、ブランドへの印象やターゲットのリアルな姿を捉える「ソーシャルリスニング」といった手法もあります。
SNSを適切に運用することで、より精度の高いデータに基づき、的確な事業展開を実施していけると期待できます。
●SNSはミレニアル世代やZ世代の情報収集手段として浸透している
D2Cブランディングのターゲットとなるミレニアル世代(1981~1996年頃に生まれた世代)は、情報収集手段としてSNSをよく使っていることが判明しています。
弊社が実施しているアンケート調査でも、20代の約6割、30代の約4割が日常的にSNSで情報収集を行っていると回答しています。

※調査期間:2021年2月10日(水)~2021年2月12日(金) 総回答者数:5420名
また、ミレニアル世代のさらに下である「Z世代」になると、SNSはさらにその重要性を増していきます。Z世代にとって、もはや普段の情報収集ではGoogleの検索エンジンなどは使わず、SNSのハッシュタグ検索を用いることが当たり前、といった人も多くなります。
こうした世代の傾向があるため、ミレニアル世代・Z世代がターゲットとなるD2Cでは、SNSは、もっとも顧客にリーチしやすいフィールドとなります。
●SNSはブランドのファンを獲得しやすい
SNSは、顧客に「ファン」になってもらいやすい場でもあります。
マーケティングにおいて、「ファン」という言葉に一意的な定義はありませんが、本コラムでは、そのブランドの売上に貢献し、そのブランドに愛着を持っている人だと定義します。
実際には、そのブランドの商品を何度も購入している人、新商品を必ずチェックしている人、SNS上や周囲の人に対してブランに好意的な意見を発信している人、など様々な捉え方があるでしょう。
人口減少社会である現代日本では、新規顧客獲得は年々難しくなっていきます。そうした中で、LTVの高いブランドの「ファン」を増やすことで売上を確保しようとする試み、いわゆる「ファンマーケティング」に注力する企業も増えています。
では、生活者・消費者が「ファン」になる、その大きなキッカケは何でしょうか。
ネオマーケティングが実施した調査によると、ブランドのファンによるSNSの投稿、いわゆる「UGC」がブランド認知のきっかけとなり、ファンによるUGCが更なるブランドのファンを獲得している構造が明らかになりました。
まず、ファンとなったブランドの認知経路を見てみましょう。
SNSが20.2%。テレビCMと並ぶ重要性を持っています。

このように、SNSによるブランドの認知が、顧客をファンに変える第一歩となっています。
さらに、「認知するキッカケ」となった情報の発信者は、企業・ブランドの公式アカウントだけではありません。一般人、インフルエンサー、著名人など、第三者のSNS発信も大きな影響力を持っていることがわかりました。

さらに、そうした発信者が「そのブランドのファンである」と認知されている割合が高いことも判明しています。

※調査期間:2021年1月21日(木)~2021年1月23日(土) 有効回答数:1000名
これらの調査結果を整理すると、SNSによるブランドのファン獲得経路には、次のような再帰性が指摘できます。
1:そのブランドのファンであるインフルエンサー、著名人、一般人による発信を、SNSでキャッチする。
2:SNSでの交流や情報収集などを経て、実際にそのブランドの商品を購入し、ファンになる。
3:ファンとなった自分自身もまた、SNSでそのブランドの話題を発信する。
4:ファンである自分のSNS発信を見た他の誰かが、そのブランドの情報を認知する(=1に戻る)
このようなプロセスで、ブランドの認知が拡散し、ファンを次々と獲得していくサイクルが、SNS上で発生する可能性があります。
●SNSは一般人やインフルエンサーによる発信の場
先ほどの内容を補強するものですが、そもそもSNSは、「一般人やインフルエンサーによる発信の場」という点が重要です。
一人一人の顧客が発信力を持ち、情報を共有・拡散していくフィールドだと考えて良いでしょう。
人々が思わずSNSで共有したくなるような、魅力的なストーリーや世界観を作り上げていくことが、D2Cブランディングの成功を左右する大きな要素です。
ネオマーケティングでは、D2Cブランドを立ち上げるお客様に対して、ブランドのビジョンを固めるところから、サイト制作、SNS運用まで一貫してご支援しています。
ネオマーケティングのD2C支援の詳細はコチラ

※関連ホワイトペーパー:D2C事業を成功させるための重要ポイントとは
D2CブランドのSNS運用成功事例と、そこから学べるコツ
それでは具体的に、D2CブランドのSNS運用の成功事例について見ていきましょう。ここでは先発の海外ブランドをいくつかご紹介します。どの企業も、Facebook、Twitter、Instagram、pinterest、LinkedIn、YouTubeなど複数のSNSを活用し、それぞれのSNSに合わせた情報発信を行っていることがわかります。
●Warby ParkerのSNS運用の成功事例
・カテゴリ :メガネ
・Facebook :https://www.facebook.com/warbyparker
・Twitter : https://twitter.com/warbyparker
・Instagram:https://www.instagram.com/warbyparker/
・YouTube :https://www.youtube.com/c/warbyparker/featured

こちらは、メガネブランドの「Warby Parker」のInstagramです。
壁に掛けられている絵画は、キュビズム様式を彷彿とさせるデザインですね。
このように、アーティスティックで独特な世界観を持つヴィジュアル・イメージを、SNSを使って積極的に発信していることがわかります。
●EverlaneのSNS運用の成功事例
・カテゴリ :ファッション
・Twitter :https://twitter.com/everlane
・Instagram:https://www.instagram.com/everlane/

こちらはファッションブランド「Everlane」のTwitterアカウントです。
先ほどの例と変わって、写真は見られません。一方で、Twitterのアンケート機能を使うなど、SNSコミュニケーションの双方向性を活かして、顧客の声を積極的に取り入れている様子がわかります。
これはSNSの特徴に応じた使い分けの好例でしょう。Twitterはテキストベースの双方向コミュニケーションに向いたプラットフォームです。こうしたSNSごとの特徴に応じて、使い分けを行っていくのも、D2CのSNS運用に重要なポイントとなります。
●AllbirdsのSNS運用の成功事例
・カテゴリ :シューズ
・Facebook :https://www.facebook.com/weareallbirds
・Twitter :https://twitter.com/allbirds
・Instagram:https://www.instagram.com/allbirds/
・Pinterest:https://www.pinterest.jp/weareallbirds/_shop/

続いては、シューズブランドの「Allbirds」のInstagramです。自社製品の靴の写真だけでなく、その靴を履いている人々のアクティビティに注目した写真も多数掲載されています。
「Allbirdsの靴を履いて楽しむ」というストーリーやメッセージを、写真表現で伝えている様子が見て取れます。
●AwayのSNS運用の成功事例
・カテゴリ :スーツケース
・Facebook :https://www.facebook.com/away
・Twitter :https://twitter.com/away
・Instagram:https://www.instagram.com/away/
・Pinterest:https://www.pinterest.jp/away/_shop/

スーツケースブランド「Away」のInstagramです。こちらも商品の画像というより、アクティビティに注目した発信が多いようですね。
魅力的な旅行先を連想させる風景など、自社製品のスーツケースが活用されるシーンやユーザー体験を、写真イメージを通して顧客に伝えています。
●CasperのSNS運用の成功事例
・カテゴリ :マットレス
・Facebook :https://www.facebook.com/Casper/
・Twitter :https://twitter.com/casper
・Instagram:https://www.instagram.com/casper/
・Pinterest:https://www.pinterest.jp/caspersleep/_shop/
・LinkedIn :https://www.linkedin.com/company/casper
・YouTube :https://www.youtube.com/c/Casper/featured

マットレスブランドの「Casper」のピンタレストです。
ラウンジウェアなど商品にフォーカスした画像もありますが、自社製品の布団に包まれた小動物、魅力的なベッドルーム、リラックスする人々など、イメージやヴィジョンを伝える写真も多数掲載されています。
●himsのSNS運用の成功事例
・カテゴリ :薬・ヘルスケア
・Facebook :https://www.facebook.com/wearehims
・Twitter :https://twitter.com/wearehims
・Instagram:https://www.instagram.com/hims/

薬やヘルスケア用品を取り扱う、「hims」のSNS運用例です。こちらはTwitterアカウントになります。
これまで見てきた事例と異なり、ユーモラスな話題や面白い画像などをシェアしていますね。これらは、自社製品とは(おそらく)まったく何の関係もない発信でしょう。
自社製品の宣伝もPRも、一切行っていません。遊んでいるだけに見えますが、これも実は重要なブランディング戦略です。
親しみやすく打ち解けたコミュニケーションにより、ブランドは顧客にとって、まるで友だちのような親しい存在になります。日本語のスラングで言うところの、「推し」とでも呼ぶべきでしょうか。
顧客にとって特別な存在になることで、競合他社よりも優位な選択肢になることができます。
事例から学べるD2CブランドのSNS運用のノウハウ
それでは、成功事例から学べるノウハウを整理してみたいと思います。
一般論的に、SNSでの情報発信、顧客コミュニケーションというと、多くの日本企業は商品情報や発売情報などを発信しがちです。製品がいかに優れているか、お買い得か、機能性、セールス、キャンペーン情報などですね。
ところが、そういったセールス情報は、成功したD2CブランドのSNSでは一切発信されていません。
成功したD2CブランドのSNS発信を整理してみましょう。
・ブランドのイメージを表現する創造的な表現
・製品やサービスによって得られる魅力的な体験
・顧客に「自分もこんなことをしたい」と思わせるようなアクティビティ
・気軽なコミュニケーションを取りやすい、親しみを感じさせる発信(コミカルなものを含む)
従来の企業感覚から言えば、「まったく宣伝をしていない」「これで本当に売上につながるとは思えない」ような発信かと思います。
この感覚の違いが、D2Cと従来のマーケティングとの大きな違いと言えるでしょう。
D2Cを成功させるためのSNS運用術
D2CブランドがSNSをうまく活用するためには、以下のようなことを心がけて運用を行うと良いでしょう。
●ブランドの「世界観・ストーリー」を一貫して伝える
まず重要なのが、ブランドの世界観やストーリーを一貫して伝えることです。
海外のD2CブランドのSNSを見るとわかる通り、SNSでの情報発信(画像や動画含め)には統一感があることがわかるでしょう。最も大切な世界観・ストーリーをぶらさず、一貫して伝えることで、生活者の頭の中にブランドのイメージが構成されていきます。
これは逆に考えてみると、わかりやすくなります。
たとえば、AwayやCasperなどのお洒落な投稿写真の中に、「Now on Sale!!」「PRICE DOWN!!」「JOIN NOW!!」といったセールスを全面的に押し出した宣伝画像が混じっていたら、見た人はどう思うでしょうか?これでは、ブランドの世界観が台無しになってしまいかねません。
SNSを「チラシ」として使うのではなく、ブランドのイメージや世界観を伝える手段として使い、そこから一歩もブレないことが大切になります。
●SNSごとに発信する情報は分ける
SNSは、それぞれリーチできるユーザーや適したコミュニケーションが異なります。
たとえば、Twitterは身近なコミュニケーション、Instagramは魅力的なユーザー体験を伝える写真、Facebookは製品の機能性や、ブランドの社会貢献活動の報告…といったように、媒体に合わせて使い分けることが重要です。
どれか一つに絞って運用するよりは、複数のSNSを活用して、顧客接点を広く、多く持つことが重要です。
・どのSNSにどのようなコンテンツが適しているか
・どのようなターゲット層が見ているか
・どのような情報発信が求められているか
など、各SNSの特徴を把握して運用していくことが必要です。最初は探り探りであっても、発信したコンテンツがどのように受け入れられたか、PDCAを回していくことは必要でしょう。
どのターゲット層に向けたどのようなコンテンツを発信するのか、コミュニケーション設計も合わせて行いましょう。ただしその際も、ブランドの世界観やストーリーが崩れないよう、注意することも欠かせません。
●社内リソースに合わせた運用体制
SNS運用について、社内の理解が得られ最初から豊富なリソースを割けるブランドは限られています。通常は他業務と兼務であったり、複数名で分担したりとスモールスタートの場合が多いのではないでしょうか。
当然、そのリソースを考慮した運用スケジュール、投稿量で運用をスタートしましょう。
●ユーザーに積極的にアプローチする
そのブランドの運用方針にはよりますが、特にブランドの「ファン」を増やす側面においては、ブランド側からユーザーに直接アプローチすることも有効な手段の一つです。
たとえば、TwitterやInstagramで商品・ブランドに対して好意的に投稿している人がいれば、その投稿に対してブランド側からリプライを送るなど、アクションを起こします。
こうすることで、その人との心理的距離を近づけるよう、働きかけることができます。ブランドへの好感度が上がると期待できるのはもちろん、そのやり取り自体が更なるUGCを生み、多くのユーザーに届けられる結果にもつながります。
ただし、あまり強引になりすぎないよう、十分な配慮も必要です。その人の状況をよく見て適切にアプローチしないと、押し付けがましく思われ、迷惑がられてしまうケースもあります。
こうした見極めは、経験がものを言う部分でもあります。SNSの感覚に慣れているミレニアル世代のスタッフを起用するなど、柔軟な人事もポイントになるでしょう。
まとめ
D2Cブランドにおいて、SNSは重要なフィールドです。生活者と直接つながることができる貴重なコミュニケーションの場であり、新たな認知、顧客を獲得できるメディアになり得ます。
ブランドのイメージやストーリーを一貫して伝えるだけでなく、顧客を巻き込んだ事業展開、ファンの獲得、情報収集とデータドリブンな事業推進など、様々な面で重要度が高くなります。
また、ブランドが頻繁に情報を発信するSNSは、いわばそのブランド自体の印象をも形作っていきます。成功しているD2Cブランドのように、SNSごとの特徴、それぞれのユーザー属性に合わせて運用していきましょう。
ネオマーケティングでは、D2Cブランドの立ち上げから、SNS運用のコンサルティングまで行っています。SNSでのコミュニケーション設計や、運用リソースに課題がある方は是非ご相談ください。