「顧客は自社の商品サービスに満足しているだろうか」「不満はないだろうか」というのは、商品やサービスを提供している企業にとっては最も気になることかと思います。
顧客がどの程度満足しているのか、いわゆる「顧客満足度」を計測することで、現在の顧客の状況を把握し、新商品開発や既存商品の改善、ひいてはブランディング活動にいかすことができます。
そこで今回は、「顧客満足度とは何か」「どのように計測するのか」について、調査方法や分析方法を紹介しながら解説します。
顧客満足度とは?
顧客満足度とは、「顧客満足」の程度を数値化し、客観的に評価できる指標として可視化されたものを指します。英語ではCustomer Satisfactionといい、その略語として「CSAT」が用いられることも多いです。
そもそも「顧客満足」とは、自社の商品サービスについて、顧客が満足している状態を表しますが、ここでは、「各企業が提供する商品やサービスについて顧客の期待水準を超えること」と定義づけます。
「マネジメントの父」と称された経営学者であるピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、「企業が売っていると考えているものを顧客が買っていることは希である。・・・顧客は、満足を買っている。しかし誰も、顧客満足そのものを生産したり供給したりはできない。満足を得るための手段を作って引き渡せるにすぎない」という言葉を残しています。
つまり、顧客が商品やサービスを購入するとき、商品やサービスそのものを通して、実際には商品やサービスに期待する価値を購入しているのです。
この考えに基づくと、例えば、テレビを購入する場合、テレビという商品を通して、番組などで得られる感動などを購入していると言い換えることができます。
顧客それぞれが持っている期待水準を上回ったときに、顧客は満足し、期待水準を下回ったときに不満をもつということです。
顧客満足度調査とは?
顧客満足度の調査方法は、この調査に限った話ではありませんが、様々なパターンがあります。
自社会員様向けにアンケートを送付することもあれば、外部の調査会社に依頼して、ネットリサーチや郵送調査などの定量調査、場合によってはインタビューといった定性調査も行う場合があります。
顧客満足度調査とは、特定の自社商品・サービスが市場内で顧客からどのように評価されているのかといった、現状を把握するために行う調査手法です。顧客ニーズの把握およびサービス品質の向上等を目的として、広く実施されています。
顧客満足度調査を適切に設計・実施することができれば、特定商品の総合的な満足度を測るだけでなく、その商品への満足度を高めるために改善すべき要素を可視化することができます。購入に至った理由や、商品の利用頻度・利用方法、満足しているのは具体的にどういった点か、などを様々な角度から測ることで、売上からだけでは把握できなかった商品の強み・課題がわかり、次なるアクションを設定するのに役立ちます。
顧客満足度調査の具体的手法
ここでは、定量調査を例に、顧客満足度調査における具体的手法を3つ紹介します。
■NPS(ネットプロモータースコア)
ロイヤルティ マーケティングの第一人者であるフレッド・ライクヘルドが提唱した手法で、顧客満足度調査において頻繁に採用されています。
この手法は、顧客満足度の他に、顧客ロイヤルティを示す指標でもあるため事業の売上成長率との相関性が期待されています。

0~10点の11段階でで回答し、9〜10点と回答した顧客(推奨者)の割合から、0〜6点と回答した顧客(批判者)の割合を差し引いて、スコアを計算します。
NPSの詳細については、下記コラムをご覧くださいませ。
■5段階による満足度評価
こちらもNPS同様、顧客満足度調査に頻繁に採用される手法で、不満~満足を5段階で評価してもらいます。

場合によって項目は「不満~満足」の限りではありません。また、「非常に満足~非常に不満」といった選択肢も見受けられますが、「非常に」といった表現を用いると回答者が「そこまで思っていない」と考えて回答結果にバイアスが発生する場合があります。そのためネオマーケティングでは、上図のような表現を推奨しています。
■NRS(ネットリピータースコア)
NPSが「友人・知人に紹介したいと思いますか?」という質問で顧客満足度、顧客ロイヤリティを計測するのに対して、NRSは「あなたはこの商品/サービスを継続して利用したいと思いますか?」のように、回答者自身の意向を参考にする指標です。
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NPS同様、回答項目によって回答者を分類します。
また、NRSはNPSと比べて比較的マイナーな指標ではありますが、ネオマーケティングではNPSとNRSをかけあわせることで、より精度の高い「顧客満足度調査」が可能であると考えます。
この「NPS×NRS」について詳しく知りたい方は、下記コラムをご覧ください。
顧客満足度調査の項目例
アンケート形式であれ直接顧客と面会して聞き出す方法であれ、顧客満足度調査を行うには質問項目を考える必要があります。そしてその質問項目は、顧客満足度を定点で比較できる指標となるものでなければ、満足度改善に対する施策の効果検証ができません。
顧客満足度調査はどのような活用したいか、をどれだけ調査前に想定できるか、が非常に重要です。
顧客満足度を測定するための聴取項目とそこから分析できる内容としては、以下が一般的といえます。
- 各サービスの満足度とその理由・・・詳細な満足/不満状況の把握と要改善項目
- 満足点と不満点・・・今後の改善要素
- リピート意向・・・リピート率の把握
- 意見、要望・・・現状把握、今後の改善要素
顧客満足度調査後のアクション
顧客満足度調査を行ったとして、その調査結果をどのように活用すればよいのでしょうか。
下記のようなお悩みをよくお聞きします。
- アンケートでは不満を深堀りできず、本質的な課題に辿り着けない
- NPSを上げるための施策が見当たらない
- 顧客満足度調査が昨年との比較でとどまってしまう(調査が目的化して改善活動を行っていない)
冒頭でもお伝えしたように、顧客満足度調査の手法はアンケート調査だけではなく、インタビューなど定性調査を行う場合もあります。顧客満足度調査が今後の改善に繋がるために、例えば下記のような調査方法があります。
■高評価をした顧客へのインタビュー調査
例えば、NPSで7~8点の顧客に対して、7~8点をつけた理由や、どのような要素があれば9~10点をつけていたと思うか、などといった質問をします。
9~10点の顧客に対しては、同様に9~10点をつけた理由や、今後どのような要素が発生したら点数が下がると思うか、といった質問をします。
加えて、高得点をつけた回答者に対して「どのように商品/サービスを知ったのか」「どのような要素で選んでくれたのか」などといった質問をすることで、カスタマージャーニーを確認することできます。
上記のような調査を実施することで、高得点者を増やす=顧客満足度を上げるにはどのような施策をとれば良いのかというヒントを得ることができます。
アンケート調査においても、自由回答を設けて理由を聴取することは可能ですが、「その理由はどのような事象から発生したものなのか」が気になっても聞けなかったり、いざインタビューをしてみると本音は○○だった、というケースが多くあります。定量調査の数値データでは分からない、定性的なデータを収集することで、顧客満足度調査が活用できると考えます。
■低評価ではなく高評価の顧客にインタビューする理由
ここで、低評価ではなく高評価の顧客を重視する理由を簡単にご説明します。(低評価の顧客を全く参考にしないという意味ではありません)
その理由としては、低評価者の意見に耳を傾けすぎると、ブランドの軸がブレる可能性があるからです。
「低評価者の意見を参考に商品/サービスを改善することで売上増加が見込める」と思われがちですが、同時にこれまで高評価をしていた顧客が離反する可能性もあります。
その反対に、高評価者の意見を参考に商品/サービスを改善していくことと、顧客が離反することは、前者と比較して同時に発生しづらいと考えています。
もちろん、低評価者から非常に参考になる意見が出る可能性もあるので、「この意見は拾うべきか、拾わないべきか」ということを吟味することをお勧めします。
最後に:顧客満足度を上げるには?
調査をして顧客満足度がわかったとして、どのように顧客満足度を上げていけばよいのでしょうか?
その答えは、「カスタマーサクセス」という領域への取り組みにあります。
近年SaaS領域などでよく耳にするようになりましたが、SaaSに限った話ではありません。
これまで述べてきたように、顧客満足度はこれからすべての事業において重要な指標となるため、「カスタマーサクセス」への取り組みも、ありとあらゆる企業が取り組まなければならない領域です。
そもそも「カスタマーサクセス」とは、自社の商品やサービスを利用した顧客に「成功体験」を提供するために、積極的支援を行う戦略・施策実行のことを指します。
どのように「カスタマーサクセス」に取り組めばよいか課題をお持ちの方は、ネオマーケティングにぜひご相談くださいませ。
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